不安定なISOオート+ストロボ
普段ISOオート(感度自動制御…以降ISOオート記述)で撮ることがほぼないため気付かなかったのですが、室内でストロボ(フラッシュ…以降ストロボ記述)での撮影にISOオートを使うと、同じ被写体、似たような構図でも感度が超高感度だったりISO3桁と低感度になったりと不安定で、その原因を探ろうとしたのが発端です。
追記:2024.11.4
読みにくいので結論から書くと、「ISOオートでFP発光でストロボを直当てすると、至近距離ではメチャクチャ低感度を使われる」という問題で、現時点で最新のZ6IIIでも再現します。
最初に試していたことは光が差し込む室内での日中シンクロ。
が、ISOオートではアンダーに出ますが感度はISO640。
カメラはD780でマルチパターン測光でMマニュアルモードのISOオート、ストロボはSB-5000でTTL-BL(TTLバランス調光) FP発光(ハイスピードシンクロ)オンです。
1/500s f16と高感度にシフトしてもらうよう設定しました。
BL(バランス調光)の調査
・BLオン
背景は飛ばず適切に写り、被写体は少しアンダーに写っています。
元々逆光なのでプラス補正を入れることを考えれば、感覚としては素直に受け入れられます。
感度640
・BLオフ
BLを切りTTLとFPの表示だけにすると背景は少し飛び、被写体は適正です。
被写体がバッチリ適正なので、いかにもストロボ焚きましたという感じの写真になりますが、補正なし撮って出しならBL入っている写真より好ましいです。
感度3200
望む写真はそれらの間…輝度差が大きく屋外である背景は少し飛んで、被写体は気持ちアンダーで出るといいのですが…。
写真をつければ一目瞭然なのですが、自分モデル&自宅での風景がバリバリ写っているので、申し訳ないのですが想像してください。
あ、僕の顔と家を想像ではなくて、写真の仕上がりを。
設定の見直し
何かしらの設定の影響だろうか…と考え、設定を見直してみました。
関係がありそうな箇所は3箇所。
- ISO感度設定(の特に、ストロボ使用時の制御上限感度)
- 「フラッシュ・BKT撮影」にあるe4ストロボ使用時の感度自動制御
- 「露出・測光」にあるb3マルチパターン測光
1.ISO感度設定
何をどう変えても変化なし。
2.ストロボ使用時の感度自動制御
「被写体と背景」「被写体のみ」とあります。
ここで「被写体のみ」を選べば背景とのバランスを無視して高感度かつ被写体適正になりそうなものですが、なんとISOオートがオフになります。
感度自動制御の設定項目なのに、何も言われず書かれもせずオフになるので混乱します。
3.マルチパターン測光
顔認識をするかしないか。結果としては関係ありませんでした。
他カメラでの挙動とシンクロスピードの検証
※追記(2024.11.4)D780でISOオート+ストロボを再度試した所、以下に記述したD750等と同じく、基準感度の4倍までの範囲で感度が変動する仕様になっていました。(Z fc、Z6IIIでも同様)
推測ですが、2024.4.17に出たファームウェアアップデート Ver.1.11によりサイレントアップデートが入ったのではないかと思います。
D750で試してみたところ、違った挙動が現れました。
こちらは奥さんがISOオートで使うため自分でも試して知っていたのですが、ストロボ使用時は感度設定で設定した基準感度の4倍(2絞り)の上限が自動でかかります。
例えばISO100で設定すると上限を6400に設定していても400までしか上がりません。もっと高感度にしたい時は、基準となる感度を800にすると3200まで上がるようになります。
ストロボを使用する時は画質低下を避け低感度で撮影したい場合と、高感度で背景の定常光も活かしたい場合を使い分けられる仕様と思います。
室内でのBLでの写り方は、背景もろともアンダーに出がちですが、露出補正やRAW現像で修正しやすい挙動です。
新しめのカメラとしてZ fcでも試してみましたが、挙動はD780と同じで基準感度は無視。D750にはないストロボの上限感度も設定項目は新設されてはいるものの、なかなかそこまで感度が上がることも少なく、事実上活きない。
ISOオートがプログラムオートのようなカメラ任せの完全なオートになったような感じで、多分i-TTLの仕様変更があったのかと思います。
ISOオートでも高感度で撮るには
いろいろ試したところ、どうもアルゴリズムが、強すぎず弱すぎずの発光をする傾向になっているのか、距離が近いと低感度に、距離が遠いと高感度になるようです。
つまり、例えですが発光量が一定で、感度を変えることで露出を変えるような感じです。多分、プリ発光で「これじゃ弱い!」と判断すると、光量ではなく感度を上げています。
逆に言えば、近い距離だと「充分届くから感度落とすね!」と判断しているような…。
そう仮定して推測したのですが、バウンスアダプタ(ヘッドに被せる拡散ボックスで、2段ほど最大光量が落ちます)やワイドパネルで光量を意図的に下げてしまえば、必然的に感度をアップしてくれるかも…と試してみたらビンゴでした。
追記:2024.11.4
カラーフィルターホルダーSZ-2(無色)の装着でも試しましたが、効果はありませんでした。
FP発光の時のみ起こり、シンクロスピード域では起きないのは説明がつかないのですが、うろ覚えですが初期のFP発光がオートで撮れなかったことなど、FP発光は仕組み上(一定閃光の連続発光)光量の調整、連動に制約が多いのかもしれませんが、通常時の挙動など考えるとそれも考えにくいので、正直ニコンがなぜこのような仕様にしたのかはわかりません。
発端となった感度の不安定さは、ちょうどこのアルゴリズムの切り替わる境目だったのかもしれません。
追記:2024.11.4
フラッシュメータで測れば一発なのですが、FP発光時は発光量が一定で、感度により調整している可能性があります。
ISOオートは撮影条件が違い、時間のない撮影には便利なものですが、何かを変えなければならないのなら最初からISOオートは使わず感度を自分で変えればいいので、結局撮影方法は進歩せず昔のままとなりそうです。
追記:2024.11.4
調べている時に他メーカーだと「定常光撮影時の感度とフラッシュ時の感度は同じ」という文言を見かけたのですが、通常では「露出=定常光+フラッシュ光」の合成光となりますので、焚かない時と感度等が同じだった場合はオーバーになります。
ですので、もし感度等が全く変わらないのなら、定常光撮影時の被写体はアンダーになっているはずです。
順光の時はそれが顕著で、逆光時は被写体はアンダー目になる事が多いので、それを補う形で発光する事で感度は変わらず撮影できるかと思いますが…。
解決策
以下、まとめとして、「ISOオート+FP発光のストロボ撮影で高感度で撮りたいのに低感度になってしまう」問題の解決策です。
- FPを使わない(シンクロ域で)
- BLを切る
- バウンスする
- バウンスアダプタやワイドパネルの使用
- 距離を取る
- Fvロックを使用する
- ISOオートを使わない